2020年5月31日

「今を生きよう」~新型コロナウィルス禍の中で開園するにあたって~

「ご入園、ご進級おめでとうございます」とようやく申し上げることができます。長い間お待たせしました。2月末から約3カ月間、今に至るまで新型コロナウィルス(以下COVID-19と表記)騒動への対応にエンチョーとして時間とエネルギーをかなり費やしてきました。保護者の皆さんも同様のことと思います。特に小学生・中学生のお子さんがいらっしゃる方は普段よりかなり多くの時間とエネルギーを使われたことと思います。正直鬱陶しいと感じることもありましたが、家族の絆が深められ、自分の生き方や価値観を見直すことができたことを考えると、マイナス面よりもプラス面が多かった(あるいはそう評価すべきだ)とエンチョーは振り返っています。

とはいえ、COVID-19禍はまだ終わっておりません。感染症の歴史を考えるとかなりの確率でCOVID-19は存在し続けるはずです。世の中は「アフターコロナ」「ポストコロナ」、最近は「新しい日常」などといって、今後COVID-19に対応するため、私たちの生活全体があたかも変わらなければいけないかのように煽り立てていますが、果たしてそうでしょうか。開園後は感染を防止するためにでき得る限りの有効な対策と細心の注意を払うことは当然です。職員会でいわゆる「新しい生活様式」やそれに準じた「保育ガイドライン」などを長時間掛けて検討してきました。その結果、濃淡の違いはありましたが、一様に「3密を避けて、幼児教育・水口幼稚園の保育はできない」という結論でした。COVID-19ごときで(言葉が強すぎるでしょうか…)、今まで培ってきた幼稚園の保育や大切にしてきた保育理念を変更できないと考えています。

もちろん何事もなかったかのように保育を再開するわけではありません。いま、COVID-19騒動下で保育を再開するにあたり、最も大切にしなければいけないことは「安心・安全」です。保育従事者や学校関係者が集まると必ずいわれることです。でも現在のCOVID-19騒動ではかなり、誤解されたまま言われているように思います。エンチョーは次のように考えます。分かりきっていることかもしれませんが、安心とは「子どもが安心する」ことです。そして安全とは「大人が安全な環境づくりを心がける」ことです。今のCOVID-19騒動の中では、「安心・安全」のために子どもの側にかなりな負荷を押しつけてしまっているのが現状です。

幼稚園への入園で、子どもは初めての集団生活をはじめます。親子とも相当な不安と緊張が強いられます。この出発点において、幼稚園は楽しいところ、保育者は頼りになる大人、仲間がいると楽しい、そう思ってもらうことが何よりも大切です。これが子どもの安心につながります。そう感じてもらうために、出発点で、大人である保育者と保護者は子どものために自ら率先して不安と緊張を掻き消すことが肝要です。不安と緊張は子どもに感染します。COVID-19への恐れも同様です。実際の感染は確かに心配で恐怖です。しかし、それよりも心配と恐怖を子どもに感染させることの方が子どもの育ちによくないと思っています。いまはCOVID-19感染防止策を子どもに押しつける時ではなく、幼稚園は楽しい、保育者は頼りになる、家族といると安心できる、仲間といるとうれしい、そう感じてもらえるように大人が「安心」を醸しだしていくときだと考えています。いまは、子どもの育ちとCOVID-19感染への恐れを天秤にかけみて、どちらかを選ぶ時だと思います。エンチョーは子どもの育ちに重きをおいていますので、当然COVID-19感染の恐れを紙屑と一緒にごみ箱にポイします。安心して、「パパやママのようになりたい」「センセーのようになりたい」「早くおねえさん、おにいさんのようになりたい」と思ってもらうことが幼児期のこの時期大切なことだと思います。

「安全な環境づくり」について申し上げる前提として、危険をハザードとリスクに分けます。ハザードは、子どもが予測できず、自らの力で克服できない命を脅かすような危険を言うことにします。リスクは、子どもが勇気と工夫と経験でもってを克服できる危険を指すこととします。ハザードは大人の責任でなんとしても取り除かなければいけませんが、他方でリスクはそこら中にあります。リスクを全て取り除いてしまっては子どもが育ちません。大人、特に親は子どもを可愛がるあまり、リスクまでを除去しようとしがちです。昔から言われている「転ばぬ先の杖」というやつです。でも「可愛い子には旅をさせろ」が大切です。

COVID-19は、どちらかというとハザードに属するかもしれません。しかし、今のところCOVID-19というハザードを取り除くことができないのも現実です。だからといって子どもの育ちを考えるとハザードを避けて保育を止めるという選択肢は賢明とは思えません。現時点では、人間の力でコントロールできない地震や雷などの自然現象としてCOVID-19を捉えるしかないと考えています。

悩ましい限りですが、子どもの育ちを担保しながら「安全な環境づくり」のために大人ができることがないわけではありません。眉唾な論理であることは重々承知の上で敢えて言いますが、たとえば、幼児と一緒にいて地震や雷が起こったとき、もし大人がパニックになったら、子どももパニックに陥ってしまうでしょう。大人のとる態度としては、できる限りの安全を確保した上で子どもに「大丈夫!安心して!」と伝えることです。何はともあれ子どもを不安にさせず、子どもを安心させることが大事です。これが「安全な環境づくり」の第一歩だと思います。身に迫る危険があったとしても、そこに何の根拠がないとしても、子どもにまず「大丈夫、心配ないから」「私があなたを守る」としっかり伝えることが大人の責任だと思います。安全に過ごすために子どもにあれやこれや要求するのは、次の策です。まして幼児の場合、要求してもできないことが多くあります。大人が危険を察知したら、まず落ち着くこと、ここから「安全な環境づくり」が始まります。現在のCOVID-19への対応は、子どもに多くを要求しすぎです。「学校来るな」「家にいろ」「マスクしろ」「おしゃべりするな」「引っつくな、離れろ」「宿題やれ」「友だちと遊ぶな」「野球するな」……。こういうことで「安全な環境」ができたとしても、これでは、子どもが押しつぶされてしまいます。「安全な環境づくり」はどこまでも大人が主体であるべきだと思います。危険回避の有効な策が見つからないときはまず、とにもかくにも「大丈夫だ!わたしがあなたを守る」と子どもに安心を与えることが肝要とエンチョーは思っています。その先のところに子どもに負担をかけない危険回避の道が備えられると確信しています。なにか変な宗教っぽい話しですが、いまこの時点ではそういうことしかいえません。でもこれが水口幼稚園が永年培ってきた保育であり、現段階では次善の策だと思っています。

最後に、今年度の年間テーマ「今を生きよう」について。今年度のテーマはCOVID-19のパンデミックが宣言された時期に一泊職員会で話し合い決定されました。「共に生き共に育つ」はいつでも水口幼稚園で大切にされてきたことで、今後もそれは変わらないだろうということで、殿堂入りになりました。

色々な案が出されましたが、どれもCOVID-19感染拡大を意識したものでした。私たちは、「いま」しかない「いまの私」を「いま」この状況で生きたいと思います。誰かに言われて押しつけられて自分を押し殺して生きるのではなく、私らしくその子らしく生きることを保育の中で展開したいという願いがあったと思います。未来のことを心配して戦々恐々と生きるのではなく、いまある環境で、いまある力で、いまを共に過ごしていきたいと思います。変則的に始まざるを得なかった今年度はこれまでにも増して、皆さまのご理解ご協力ご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。

関連記事

おしらせマガジン
よくあるQ&A
水口協会
子どもの教会
さんまくらぶ